【参加者募集中】『行動障害勉強会』(5/31開催)
場面緘黙の主症状は、家庭では家族と普通に会話ができるにもかかわらず、学校など特定の場面で言葉や声が出ない(発話の抑制)というものです。
他にも感情や表情の抑制(例:楽しくても笑顔にならない)や動作の抑制(例:普通の速さで歩けなくなる、トイレに行けない、箸が持てない)が見られることも少なくありません。一人ひとりの症状には個人差が大きく、状態像は多様であることも特徴です。
これらの症状のため学校を含め生活場面で様々な困難が生まれます。そして様々な配慮や工夫が必要となります。
場面緘黙について代表者が執筆・翻訳した著書や論文を紹介・解説します。(順次加筆中 / 本のタイトルはAmazonにリンク / 下線の論文題目はJ-STAGE、CiNii、紀要論文にリンク(PDFで読めます))
幼稚園や小学校年齢の子どもたちを想定し、保育者、教師、保護者に役立つことを目的に執筆しました。日々の保育場面での配慮、発話が求められる授業場面、家庭や地域社会で保護者ができることを、具体的なエピソード交えて紹介しています。各1頁のコラムも12個付けました。
毎日の生活を安心して過ごすことができ、「話せる」に向かったスモール・スモール・スモールステップで、無理せず!しかしできるところから!少しずつ!前進していけることが肝心です。それによって子ども自身が自信、達成感、自己有能感を味わいながら、生活を主体的に楽しめるようにしていきます。
中核となる「四つの支援」は、①幼稚園や学校で安心して過ごせ、活動や授業への参加度を高める支援、②話せるようになるための支援、③家庭への支援、④社会生活に関する支援、です。いずれも子どもを中心にして保護者、保育者・教師、専門職が協働して実施できればベストです。
【目次】
第1章 場面緘黙の主症状と早期発見
場面緘黙はどういう状態?/場面緘黙の医学的診断基準から学ぶ/場面緘黙についてよくある誤解/場面緘黙の子どもは早期発見できる/早期発見のための担任の役割/コラム1「「場面緘黙」をめぐる用語問題」/コラム2「場面緘黙の発症年齢」
第2章 場面緘黙の症状と状態像の多様性
場面緘黙の症状と状態像の多様性/発話状況は「ちょっとしたこと」で変わる/随伴症状のある子とない子/併存症のある子とない子/場面緘黙の子どもはどのくらいいるのか?/コラム3「経験者から学ぶ場面緘黙の子どもの気持ち」/コラム4「日本の場面緘黙支援・研究事始め」/コラム5「私の場面緘黙支援・研究事始め」
第3章 四つの支援と実態把握
場面緘黙の子どもに必要な四つの支援/場面緘黙の子どもの実態把握はなぜ必要か?/実態把握の方法/コラム6「カナダ・マクマスター大学附属小児病院訪問記」/コラム7「場面緘黙と特別支援教育」/コラム8「合理的配慮」
第4章 安心感と授業・活動参加度を高める取り組み
すぐに取り組む4つのこと/担任の先生がキーパーソン/子どもと良好な関係を作る取り組み/活動や授業の参加度を高める取り組み/授業以外の参加度や安心感を高める取り組み/合理的配慮としての取り組み/子どもの気持ちを知る取り組み/友だち関係を円滑にする取り組み/保護者との連携協力の取り組み/ コラム9「段階的エクスポージャーと刺激フェイディング」/コラム10「保育場面で段階的エクスポージャーと刺激フェイディングを行った実践論文」
第5章 話せるようになるための取り組み-スモール・スモール・スモール・ステップ-
話せるようになるための「スモール・スモール・スモール・ステップ」/スモール・スモール・スモール・ステップの作り方/教育センターと学校との連携協力による支援事例(事例1)/母親・担任・特別支援教育コーディネーターへのコンサルテーションによる支援事例(事例2)/母親への遠隔コンサルテーションによる支援事例(事例3)/母親の記録と幼稚園と連携協力による支援事例(事例4)/話せるようになるためのその他の方法/子ども・家庭・学校・専門職の連携協力/安心感と参加度を高める取り組みの中に、話せるようになるための取り組みの要素が含まれている/コラム11「専門機関中心支援の初期段階の工夫」/コラム12「参考になる論文は無料でダウンロードして読める」
UCLAのリンジー・バーグマン博士の「Treatment for children with selective mutism: An integrative behavioral approach」(2013)の翻訳です。バーグマン博士は場面緘黙に関する論文をたくさん発表されていています。場面緘黙の状態を簡易に調べることができる「SMQ(場面緘黙質問票)」は日本でも翻訳され広く用いられています。
この方法論の特徴は次の6点です。
・刺激フェイディング法と段階的エクスポージャー法を中核的な技法とする。
・クリニックをベースに、家庭や学校や地域場面で子どもと親と教師が協力して宿題を実施する。
・クリニックには1週間に1度、子どもと保護者が来談し、宿題の振り返りと次の宿題を決める。
・現在の状況を見える化する(感情チャート、クラスチャート、会話はしごなど)。
・合計20 回のセッションを標準とする。
・最終的には子どもと保護者が主体的に課題に取り組めるようにする(主体性移行)。
【目次】
第1章 セラピストのための基礎知識
第2章 治療開始前のアセスメントと心理教育(親セッション)
第3章 セッション1:治療への導入とラポート形成
第4章 セッション2:ラポート形成、ご褒美システム、感情チャート
第5章 セッション3:クラスチャート、会話はしご、エクスポージャー練習
第6章 セッション4ー9:初期のエクスポージャーセッション
第7章 セッション10:治療の中間セッション
第8章 セッション11ー14:エクスポージャーセッションの中間点
第9章 セッション15:エクスポージャーの継続と主体性移行の開始
第10章 セッション16-17:主体性の移行に留意したエクスポージャーの継続
第11章 セッション18-19:エクスポージャーの継続と主体性の移行/これまでの進歩の振り返り
第12章 セッション20:再発防止と終了
第13章 治療に当たって考慮すべきこと
付録A エクスポージャー課題の具体例
付録B 治療の前に使用するもの
付録C 治療で使用する用紙
【抄録】
場面緘黙のある子どもの発話や行動は学校場面と家庭場面で大きく異なる。そのため、学校に在籍する場面緘黙の子どもの支援においては学校(担任)と家庭(保護者)の連携協力が不可欠である。一方、場面緘黙支援の専門家との連携協力も必要性は高いものの、我が国においては専門家の要件が不明確であ。英国や米国では場面緘黙支援の専門家には行動療法的技法の知識と経験が重視されているが、我が国では重視されている状況ではない。しかし、場面緘黙支援の知識と経験を持つ専門家の連携協力が得られれば、専門的見地からの支援が可能となる。最後に、三者の連携協力の態様を筆者の臨床経験に基づいて図示した。
【抄録】
令和4 年7 月に策定された「特別支援学校教諭免許状コアカリキュラム」において、場面緘黙をはじめとする情緒障害はコアカリキュラムに位置づけられなかった。本稿では、筆者が勤務校で担当している授業科目「情緒障害児教育総論」を取り上げ、場面緘黙や不登校、及び特別支援学校での行動障害などをコアカリキュラムに含める必要があることを論じた。今般のコアカリキュラムは特別支援学校教諭教職課程で教授すべきミニマルエッセンシャルと位置付けられているが、指導方法が他の障害と大きく異なる情緒障害はミニマルエッセンシャルに含まれるべきであると考えられる。
【抄録】
令和4 年7 月に策定された「特別支援学校教諭免許状コアカリキュラム」において、場面緘黙をはじめとする情緒障害はコアカリキュラムに位置づけられなかった。本稿では、筆者が勤務校で担当している授業科目「情緒障害児教育総論」を取り上げ、場面緘黙や不登校、及び特別支援学校での行動障害などをコアカリキュラムに含める必要があることを論じた。今般のコアカリキュラムは特別支援学校教諭教職課程で教授すべきミニマルエッセンシャルと位置付けられているが、指導方法が他の障害と大きく異なる情緒障害はミニマルエッセンシャルに含まれるべきであると考えられる。
【抄録】
行動療法の技法の有効性はさまざまな要因によって影響される。それらの要因をinterbehavioral psychologyパラダイムを用いて検討することの有用性を考察した。そのために,選択性絨黙の8歳女児の事例を提示し,刺激フェイディング法が有効であるための条件を検討した。その結果,特に刺激機能,状況要因,行動の歴史といったinterbehavioral psychologyパラダイムの構成要素を検討し,それらの要因をも操作することが有益であることが示唆された。
【抄録】
本特集論文は、日本特殊教育学会第 61 回大会において、日本場面緘黙研究会が企画した自主シンポジウム(わが国における場面緘黙研究の現在と今後の方向を考えるⅨ―高校入試における場面緘黙のある受験生の「英語スピーキングテスト」及び「自己表現」をめぐって―)を基に、企画者、話題提供者、指定討論者が新たな情報や内容を加えて構成し直したものである。中学校では 2021 年度から改訂学習指導要領が全面実施され、出口にあたる高校入試においても思考力・判断力・表現力等を重視した新たな選抜方法が導入されつつある。本論文では次の観点、①学習指導要領で求められる資質・能力と場面緘黙の障害特性との関連、②場面緘黙のある中学生が直面する課題、③新たな選抜方法によるねらいから、場面緘黙のある中学生を取り巻く現状を整理した。高校入試はもとより、普段の授業における思考力・判断力・表現力等の育成と評価の方法が検討不足であり、まずは一人ひとりに応じた教育的支援や合理的配慮が行われることが望まれる。
【抄録】
本研究では、場面緘黙を示す幼児1名を対象とし、大学教育相談室での行動的介入の最初の導入期2セッションを含め、その後の心理治療の展開初期までの計10セッションの教育相談場面での手続きを報告し、その結果から刺激フェイディング法及び随伴性マネジメントの効果を検証することを目的とした。介入手続きは、プレイルームで一緒に活動する人と活動時間を刺激フェイディング法に基づいて調整した。従属変数は場面ごとの発話・表情・身体動作レベルであり、5段階のチェックリストを用いてレベルを評定した。発話は副セラピストとの遊び場面で増加し始め、その後、主セラピストとの学校ごっこ場面でも自発的な発話が見られた。表情も発話の変化に伴い、ほほ笑みや笑顔が増加した。身体動作は全セッションで緊張は見られなかった。本研究は主に教育相談場面で介入を実施したが、幼稚園と小学校場面でも緘黙症状がある程度改善した。一方、発話と表情レベルは活動内容によって変動が大きく、より効果的な参加者・活動の調整については今後さらに検討する必要がある。
【抄録】
本研究では、わが国の幼稚園や保育所における場面緘黙幼児の支援に関する先行研究を概観し、保育場面における支援の在り方を検討することを目的とした。対象とした先行研究は、和文の学術誌および学会発表論文集に掲載された、幼稚園や保育所において場面緘黙の幼児への支援を実施している研究であった。そして、選定基準に適合した学術論文5編と学会発表論文集掲載論文5編を分析対象とした。対象児の年齢は2~6歳であり、対象児の多くは発話がないだけでなく、過度の緊張や集団活動や遊びに自分から参加しないといった特徴が見られた。保育者または外部支援者によって、話すことに関する支援、及び園生活や保育活動に関する支援が実施されていた。これらの支援を通して、対象児の発話や保育活動への参加の改善が見られた。しかし、分析対象とした学術論文は5編と少なく、今後は海外の保育場面における場面緘黙幼児の支援の現状を把握する必要がある。
【抄録】
本研究では、選択性緘黙の経験者に学校生活上の困難と教師の対応に関する質問紙調査を行い、選択性緘黙の児童生徒が抱える困難を明らかにするとともに、より望ましい対応を検討することを目的とした。対象者は、選択性緘黙の当事者会に所属する会員48名であり、回答のあった22名を分析対象とした。自由記述の質的分析から、困難場面は音読や指名時の発言などの直接的な発言場面の他に、グループ活動や体育、休み時間、行事など、本人が主体的に行動したり、対人関係が影響したりする活動にも困難があることが明らかになった。困難状況においては、クラスメイトからの孤立、身体動作の抑制、困難を回避するための欠席といった参加機会の制限が見られた。また、教師には選択性緘黙に対する正しい理解は言うまでもなく、発話や参加を強制しないこと、発話に代わる表現方法の許可、孤立を防ぐための働きかけ、自主的に動けないときの声かけ等を行う必要があることが示唆された。
【抄録】
場面緘黙の有病率についてのこれまでの研究では、研究対象や研究方法がそれぞれ異なり、統一した見解は得られていない。本研究では、茨城県南部の公立の幼稚園、小学校、中学校計73校における場面緘黙の幼児児童生徒の在籍状況を調査した。調査票にDSM-5の場面緘黙の診断基準を示し、各学校の教師(特別支援教育コーディネーター、校長等)が診断基準に基づいて回答した。その結果、在籍率は全体で0.21%で、男女比は1:2.1と女子の方が多かった。学校種別の在籍率は幼稚園の0.66%が最も高く、小学校0.20%、中学校0.16%であった。場面緘黙の幼児児童生徒が在籍する学校の割合は全体で39.7%で、幼稚園28.6%、小学校40.9%、中学校46.7%であり、中学校では半数の学校で場面緘黙の生徒が在籍していた。
【抄録】
場面緘黙(SM)のある思春期の人には不登校などの集団適応障害やうつなどの精神病理学的な随伴症状が見られることがあり、状態像はきわめて多様である。本研究では、発話や動作の抑制に加え、不登校、社会不安、うつなどの随伴症状を呈する場面緘黙の高校生に対し、音読後の声量フィードバックと現実エクスポージャーを実施した。その結果、声量フィードバックでは生徒の声量は研究開始時と比較して10 dB改善し、聞き取りやすい大きさになった。また、発話や動作に対する不安スコアが減少し、カウンセラーへの応答回数が増加した。しかし、治療後も生徒は小さな声で話し、話す回数も少なかったことから、治療効果が十分であったとは言えない。しかし、一般に思春期における場面緘黙の改善は困難と考えられており、本研究で適用した介入は測定可能なポジティブな効果があったと言える。
【抄録】
本論文では、小学校入学を契機に場面緘黙症状を呈した小学校1年女児の母親に対するオンライン・コンサルテーションの経過を報告し、場面緘黙症状の改善をもたらした要因について検討した。